あだめとヨッシーの不愉快なクリスマス後編。

前回の続きですわ。

あだめは、ヨッシーにクリスマスの約束を取り付けました。
どこで何しよう、ってなったんだけど、どうせ街中に出たって、幸せそうなアベック(死語)ばかりを目にするわけでしょ?
わざわざそんな自傷行為に走ることないよね、じゃ、どっちかの家で過ごそうか、という話になったのでした。

そしたらヨッシーが、
「あだめちゃんー、私ね、クリスマスに見たかったDVDがあるのー」
って言うから(てかこの子は年上且つ先輩の私に「ちゃん付」してくるんだよなー)
「おう、何かね」って聞いたら、
「あれあれ、えっと、坂本龍一さんの音楽が有名な映画ー」
て言うわけですよ。

「あぁ、あのちょっと古めの映画だよね」
「そうそうー」
私も観たことないけど、たしかあれ戦争映画じゃん…
でもまあ、クリスマスだし、何十年かに一回位、クリスマスから戦争と平和を考えるのもいいかなって思って、賛成したのです。あの音楽も好きだったし。

「じゃ、DVD観て、ケーキにローソクさして『きよしこの夜』歌って、食べて、踊って解散って流れだね」
「おういぇー。じゃーあだめちゃんウチ来てよー、DVD借りておくからー」

私の家にはDVDプレイヤーが無いので(PCでは見れるんだけどね)、私がケーキ持参でヨッシーの家にお邪魔することになったのでした。

ささやかな計画ながらもちょっと楽しみになってきた聖夜前日だったのでした。

そしてクリスマス当日

ヨッシーのアパートのベルを鳴らしてドアからヨッシーの顔が出現した瞬間、早くも私は押し寄せる後悔を感じたのでした。

いつもながら華の無いヨッシーの笑顔の背景には、足場無く積みあがった雑多な物々の山…
忘れてた。すっかり忘れてた。 コヤツは「片付けられない女」だった…!!

「ちょっと、人を呼ぶのにこの部屋はないんじゃない!?」
あまりの散らかりっぷりに、第一声から非難してしまう私。
ヨッシーは、
「ごめんごめん~でも、あと5日で大晦日でしょ~?なんか、今片付けるの勿体ないなって思って」
何が勿体ないのかわからないけど、割と寒かったし仕方なく中へ入る私。
冬だからか、匂いがあまりしなかったのが救いでした。随分前になるけど、夏に行った時は酷かった。ハエが5,6匹飛んでたっけな。

ゴミをかき分けながら、こたつまで移動。

で、とりあえずはDVD観るってスケジュールになってたんだけど、
DVDをレンタル袋から取り出しながら彼女が言うわけですよ。

「なんかね~、坂本龍一のやつ、見つからなかったの。でもね、クリスマスに良さげなのあったから、それを借りて来たよ♪」

そう言って取り出したDVDには、「パッション」と書いていました。
これね。

パッション

「キリストの話らしいよ~。クリスマスってキリストの誕生日なんだし、最適だよね!」

レンタルDVDだから、味気ない無色のプラスチックに単色のDVDだったわけなんだけど、それでもなんだか嫌な予感はしていました。

これを、女2人が空元気を振り絞って楽しく過ごそうとしている場で、観て良いのか。本当に良いのか。

私の心配をよそに、ヨッシーは華の無い顔にルンルンとした表情を浮かべて、DVDプレイヤーにそやつを吸い込ませていきました。

女2人のから騒ぎクリスマス会で映画パッションを観た感想

鑑賞を開始して30分後。
早くも全力で後悔している私たちがいました。

ダメでした。

パッション

まじでこれはアカンですわ。

痛い。
痛すぎです。

十字の板に、手足を釘で打ちつけられ、金属製の鞭で殴られる度に血や肉が飛び散る…
鞭がバチーーンッていう度にキリストから剥がれていく血肉がやたらリアルで、俳優さんの叫びも物凄くリアルなのですよ。
目や耳を塞いでしまいたくなるような残酷なシーンを延々見せられる映画でした。

弟子に裏切られ、救おうとしていた民衆からは偽物と罵られ、救いのない状態で最後まで神に民の救済を訴えながら絶命するイエスさん…。

映画が半分も行かない間に、私たちは確信していました。

これは、彼と過ごせない女たちが、街に出ることも出来ず家でひっそりとクリスマスを楽しもうとする時に見る映画ではない、決してそのような時に見る映画ではない、と。

観終わった時、ヨッシーのゴミ屋敷には湿った空気が充満していました。
ヨッシーは無言でDVDを取り出し、プラスチックのケースに収めました。
私はそれを黙って眺めていました。

しばしの沈黙の後、ヨッシーはこう言いました。

「キリストは、12月25日に生まれて、そしてこうやって死んでいったんだね…」
「そうみたいだね…」
「キリストは、生まれて幸せだったのかな…」
「どうだろね…」
「なんで、私たちは、キリストがあんな死に方したのに、こんな風にクリスマスを楽しんでるのかな…」
「……」

それはね、ヨッシー、日本の企業も社員を養わないとならないからね、イベントに乗じてお金を使ってもらうことに一生懸命だからだと思うよ。
そう思ったけど、声に出来ない私がいました。

私は変わりに出来るだけ明るい声で、

「とりあえずさ、折角ケーキを買ってきたんだし、食べようよ」

と言いました。

「あ、ローソク用意しとしたから、使って」 そう言って彼女が取り出したのは、

ローソク

こんな感じのローソクでした。

「なんかね、可愛いの探したけど、無かったの」

ある意味最適なローソクすぎてもはや突っ込む気も起きない…。

仏壇用のローソクをケーキに差して、電気を消して、ぼそぼそと「きよしこの夜」を歌う私たち…

もうさ、通夜だよね。

誕生日っていうかさ、
キリストの通夜ですよ。

汚部屋が荒んだ墓を連想させます。

映画の中で飛び散ったキリストの血肉が頭をちらつく中、私とヨッシーは言葉少なにホールケーキを頬張ったのでした。

そうして踊ることなく、じめじめとしたクリスマス会は幕を閉じたのでした。

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photo credit: Nick-K (Nikos Koutoulas) via photopin cc

そういえば、ブログランキングから色々婚活ブログ読んでたら、読み応えのある婚活指南サイト見つけた。

婚活支援さかなのブログ

来年はもうヨッシーとクリスマするのはご遠慮願いたいし、ちょくちょく取り入れて短期婚活頑張る。マジで。

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